
「何か面白いの撮れますか?」うつむいた頭の先の方から男性の声がした。顔を上げるとこちらに向かってキャップの陰から少し笑った口が見えた。只落ち葉を撮っていただけ..でも私には確かに面白いというのか映したい材料がたくさんあって、そこには烏が落としたであろうオレンジの実と少し落ちてはいるけど色づきを残したもみじの葉が並んでいた。それを撮っているが難しいです、と伝えた。「へぇ。それは良さそうですね。ところで今年の良かったことは何ですか?」と5m程離れたまま会話が続いた。数秒間をおいて屋久島に行けたことを伝えた。そして男性の方は大谷翔平の活躍ですね、と選手の功績ヒーローぶりを話された。あと一日で来年早いものきっと良い年になりすよ、と言われ互いに良いお年をお迎えくださいと見送った。近くに寄ってきたイヌも「何してるの?」と言いたげに過ぎて行った。
さっきまでは少し陽が照っていたけれど今ここは陰。F値は開放にしてISOは400としてみて・・など試すが「⁇」となる。段々数値が頭から遠のいて枯れ葉(枯れ葉でないきれいなまま落ちた葉もちらほらあった)のこれが綺麗だとかここが良いか、あここもとやっている間に空気がだいぶ冷えて指先が冷えてくる。
今年は少し時間ができた事があり動画をたくさん見た。自己啓発系の話しや語学に音楽、カードが個性的で声もことばも良いなと思っている時々聞くタロット.. 知りたかったこともあるが沢山の情報に頭がつめつめになっていった。が、沢山の枯れ葉やまだ赤く染まっている紅葉の木を見ているとただそれだけで良いような気持ちになっていた。それにしてもSNSにあがってくるすっきりシンプルクリアな写真はきれいだなといつも思う。
1年程前に西洋美術館で鑑賞した景色も最もだが美しかった。物置部屋にあるたまに開ける化粧台の引き出しにそこで買ったB5判のアクセリガッレン=ガッレラ(ケイテレ湖)の絵のクリアファイルがある。題どおりに画面のほとんどに湖、その向こうに森林その向こうに山の景色が落ち着いたblue系に静けさを感じる一枚だ。毎回時間延長で申し訳ない(有難い)なと渡したいなとでもお土産は買わないと言われていたから迷惑かな..と持って行っては帰りの数回結局そのままだった。葉っぱも景色も良い又こうやって人の目を通して収められたかたちたちもこんな見え方があるのかと惹きつけられる。
サロペット。今日はこれを着た。若いころから何となく良いな着てみたいなと思っていた洋服で試着したらしっくりくるし数年ぶりの友達もうまく言ってくれて買った初めての一着。これを着ると前掛けをして作業できそうな気持ち(以前調理場にいた)になり、エプロンをしているような、又大き目のポケットがついて知らないうちにビスケットかキャンディが入っていそうなそれか何か舞い込んできそうな自由な気持ちになる。もみじトウカエデポプラ..色んな枯れ葉が混じって地面を彩る様にやはり一つじゃなくて色々試してみようと思ったりして。
一本の紅葉以外の落葉樹は枝だけになって今は足元にザクザク踏み込めるほど葉っぱたちは年の瀬を告げていた。
