平日の朝、羽田への浅草線は通勤客と旅行者で混雑していた。福岡への機内は飛行に慣れた風のビジネスマンが多く落ち着いた空気。5月2週目の木曜、前日位まで本当に行くのか行けるのか(実際先月に子が熱を出していたから)計画しておいてこんな心境になることは珍しかった。目的地は屋久島、学校を見ることと島の「樹」を見る、あとはその時に決めるとしていた。福岡から乗り継ぎだったので案内されるように行くとかなり離れた所にある81番ゲートにすんなりと着いてしまった(着くことができた)。予め1時間半ほど余裕がある事は分かっていたのでやはり九州ラーメンだと、荷物の再チェックは承知の上一旦出ることにした。やや硬、細麺、白いスープ、高菜でラーメン鉢のイメージを浮かべたままレストラン街にあるラーメン街の各々の店の看板を見、自分とこどもの直感でココがいい、という店(一幸舎)を決める(譲った)。九州で食べるとんこつは25年ぶりだ多分。旨し。
そのゲートは一番端にあり、リラックスした乗客が多かった。あとひと乗り約一時間。尾翼周辺にオレンジ色に鶴の絵、中型プロペラ機で飛んでいける嬉しさが自然と高まり、中はきっちり人が収まって自分は通路側だったが晴れた空、そして見える範囲をキリンの首如く視線は九州の陸というのをずっと眺めていた。「桜島が見えます。」のアナウンスでは「そうか、この下なんだな」と映像で見たものを想像し視線は外のままそうこうしているうちに点々と海に浮かぶ島々が近づいてきた。着陸体勢に入る時というのは機体が揺れる緊張とその地を踏めるというまた違った緊張を感じる。そして扉を出ると、少し湿った潮風と周りは茂った緑、ずっと前から待っていたような屋久島空港と書かれた看板が迎えてくれた。
空港から宿へはレンタカーで向かった。のは良かったのだがおよそ15分と予定していたのが45分もかかってしまった。それは・・まずナビが反対の位置を示し2度程往復すること3度目もその辺りになるので明らかに民家だと分かったが念のため確認に近くまで行ったところ家の方が出て来て下さったのだ。そして言われるには、以前から同じように入って来られ同じようにナビの示す通りにくるとココになるようだ、ということだった。なので慣れたご様子「ここを右に出られてあそこのミラー手前を左に・・」
あぁ親切な方で良かった、と左に折れること、次は両脇は元気な草木に細い道,カーブを行くが時々見えるのは民家・・あれ家だよねと又も不安になる。更に先に建物が見えず下りカーブで一車線分しかない道をどうするか行くか行き過ぎた?と苦手なバック「左の溝大丈夫?!」と何度言ったことだろう。一旦宿泊先に電話するが電波なしで通じず。というわけで又も民家を訪ねることにしたところ、「あぁ、そこね。」と柔らかに教えて頂くことやっとのことで到着した。
ペンションの庭が駐車場、「あぁこんにちは。えらい大きい車で来たんやな。」と笑顔で出迎えて下さった。「いやKが良かったんですがネットでは何度やっても取れなかったんですよ。」「え、ほんとかいな、そんなん空港周りレンタカーやさんいっぱいあるよ・・」と、庭に咲いているオレンジの特攻花やもう一つのペット可の趣のある小屋(?)の紹介などざっくばらんな会話をしながら宿に入った。内はまず木のものが目に入り広い和室を見た時にはどこか遠くの親戚の家を訪ねたような懐かしい感じがした。無事着いたことを実感した。
それからは近くのお茶屋さん(八万寿茶園)でどのお客さんもアイスを食べているのを見てこれは、と頂く。あまりにも通りに車もないので何となく写真を撮っていると店のおばさんから「そんな道路撮ってるんやったら、裏に茶畑あるからよかったら見ておいで。」と教えて頂いたので後に立ち寄ってみると、まぁ静かまっすぐに並んだもっと先には愛子岳がまで続いていそうなくらい広い茶畑が広がっていた。近くで見るのは何年ぶりかな・・日本で一番早い新茶はここから、既に刈り取られてすっきりきれいな形の列だった。何度も深呼吸しそこにはちゃんと見下ろせる少しだけ高い台があったので上がり、いろんな角度から畑を見、何度も聞こえる鶯の声に風に樹のつた・・を肌から感じ癒されること思いのほか40分ほどそこにいたようだ。来たんだな、とここでも非日常を感じた。
宿の夕食は島のごはん。トビウオ焼き・・ほかあるが写真オープンがNGなのでこの辺にしておこう。そのおっちゃん(一応親しみを込めて?)と焼酎をいただき料理についてや島のことそして少しだけ学校のこと・・話して下さった。
その夜。晴れていたからどうだろう・・とひとりそっと玄関を開けてみる。一瞬?!となった。
目の前は真っ暗、足元にはこの辺に飛び石があったはず..と記憶を辿り一歩目をゆっくり踏み出し暗闇の空を見上げた。チラチラっと白い星が細かく輝いて空は時間が経つほど鮮明に広がって見える・・
きれいだった。一度にみた初めての空だった。
ぼそっとギフトだね、ありがとうってことばがこぼれていた。