空をみて

以前カラカスに住みはじめて数か月くらい経ち、スペイン料理のレストランに行ったときのはなし。

見た感じ60代のご夫婦が自分達のテーブルから私たちの席に座ってきた。そしてどこの国から来たの、どれくらい住んでいるのかなど質問された後、男性がスペイン語の単語disfrutarについて熱く語り始めた。スペイン語があまり分かっておらずあいまいな反応になっていたためか更に熱弁となった。

disfrutar」=楽しむ。この男性から人生を楽しむことがとても大切だ、と何度も言われた。大まかに、遠く離れたこの国にきて過ごす時間、料理を待つ時間から食べること、話す、見たり聞いたりすることすべてを楽しみなさいってことだった。同じ内容のことを何度も言われ続けて、もしかして酔っているのかと思ったが注文もまだだったし、私たちに伝えたかったんだなと後からじんわり反芻することになった。日本にいてテーブルについて知らない人が同じテーブルにやってきて、自分の思いを言いにくるなんて経験がなかったから(自分達が外国人だったこともあるが)新鮮だった。そして食後はなぜか他のお客さんたちと明るすぎない温かな明りのなかで、乗りのいい音楽にあわせて円になって踊ったりした。知らないうえ治安が悪いと聞いていた国で緊張連日のはざま、それは人種も年齢も関係なく偶然その場で居合わせた人たちと、しぜんで心地よい時間を過ごすことができた夜だった。

 

いまの幸せを顧みる思い出が甦ってきた。

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